画用紙に水彩絵具で色を塗ると、水分を含んだ紙が波打って、ヨレヨレになってしまうことがあります。
この「ヨレヨレ」が起こると、せっかくの作品がデコボコしてしまって、見栄えも悪くなってしまうことに……。
しかし「水張り」という方法を使うと、紙がヨレヨレになるのを防げるのを、皆さんご存知でしょうか?
今回の記事では、紙をヨレヨレにしない「水張り」のやり方や、そのコツなどについてご紹介していきます。
水張りとは?
水張りとは、画用紙を一度水で濡らしてパネルに貼り付け、紙が歪まないようにする手法のこと。
絵具を使ってイラストを描く人は、この「水張り」を行ってから絵を描き始める場合が多くなっています。
どうしてヨレヨレしなくなるの?
濡れた紙がヨレヨレになってしまうのは、紙には「濡れると伸びる」性質があるため。
水張りは、一度濡れて伸びきった紙を、パネルに張って固定したまま乾かして、紙が歪むのを防ぐ方法です。
水張りに必要な材料・道具を揃える
ここからは、水張りに必要な材料と道具をご紹介していきます。
用紙(水張りサイズ)
画用紙やケント紙、水彩紙などが多く使われていますが、大抵の紙は水張りに使えます。
しかし、水張りをする用紙のサイズには注意が必要です。
パネルに貼り付ける関係上、用紙はパネルより一回り大きいものでなくてはなりません。
画材屋では「A4画用紙の水張りサイズください」と店員さんに言うと、水張り専用の大きめな用紙を売ってもらえる場合がありますので確認してみてください。
木製パネル
紙を貼るために必要な道具。
画材店で販売されている、木製パネル(ベニヤパネル)を使います。
パネルサイズは用紙と同じで問題ありません。
水張り時にパネルが汚れていると、水張りした際に仕上がりが汚くなってしまう可能性があるので、作業に入る前に水拭きをして、よく汚れをとってから使うようにしてくださいね。
刷毛
用紙やテープなどに水を塗るための道具。
きれいに手入れのされた刷毛であれば、自分の持っているもので十分でしょう。
大きな用紙を水張りする場合には、紙全体に水を素早く・まんべんなく塗るため、大きめの刷毛があると便利かもしれません。
容器
水を汲んでおくための道具。
筆洗やバケツ、ボウルなど、水が入るものであれば、種類は問いません。
こちらも刷毛と同じく、よく洗ったきれいなものや、新しいものを使うようにしてください。
水張りテープ
用紙をパネルに貼り付ける際に使う道具。
「裏面を水で濡らすと、糊が溶けて粘着力が出る」という、切手の裏面と同じような性質をもつテープです。
水張りテープを扱う際の注意点は、「使う部分以外を水に濡らさないこと」と「使用後に放置しないこと」。
誤って濡らすと、テープ全体がくっついて使えなくなってしまうのは当然ですが、使った後に放置するのも控えたほうがいいでしょう。
とくに湿気の多い部屋に放置すると、空気中の水分で糊が固まり、使えなくなってしまいますので注意してください。
使い終わった水張りテープは、密封できる袋や缶に入れ、乾燥した場所で保管しましょう。乾燥剤を一緒に入れるとより安心ですね。
基本的な水張りの手順を紹介
ここからは、水張りのおおまかな手順をご説明していきます。
1:水張りテープを切る
まず、木製パネルの辺より少し長めに、水張りテープを切っておきます。
四辺全てを貼り付けるため、テープは4本用意しましょう。
2:用紙に水を塗る
刷毛に水をたっぷりとつけて、用紙の裏側全体に、しっかりと水を塗ります。
裏側全体をよく濡らしたら、そのまま数分間放置し、用紙全体に水を染みこませましょう。
3:水張りテープを貼る
用紙に水を染みこませたら、切っておいた水張りテープの粘着面に刷毛で水をつけ、用紙に貼りつけます。
テープは、用紙の端から5mm~10mm程度を覆うように貼ります。
4:空気を抜く
用紙とパネルの間に空気が入らないよう、手で空気を押し出すようにしながら、テープを貼りつけます。
空気が入ってしまうと、水張り後に紙がたわんだり、引きつったりする原因になってしまうことも……。
用紙が大きいと、この作業も大変になりますが、しっかり空気を抜くようにしてください。
5:じっくりと乾かす
四辺を貼りつけられたら、あとは乾かすだけ。
紙全体が完全に乾くように、数時間から一晩置いておくといいでしょう。
乾燥後、用紙全体がピンと張っていれば、水張り成功です。
では、水張りした後の扱い方と失敗しないためのコツについてご紹介していきます。
水張りした後・作品が完成した後の扱い方
水張りした用紙は、その後どのように使えばいいのでしょうか。
ここからは、水張りした用紙の使い方や、絵を描いた後の対処についてご紹介していきます。
パネルに張ったまま使う
水張り後によく乾かした用紙は、パネルに張ったまま制作に使います。
もちろん、木製パネルが台になるため、台として使用する”カルトン”も必要なくなります。
1枚の紙の状態より持ち運びがしやすく、一度貼ってしまえば、扱いがかなり楽になりますね。
完成後はパネルから切り離す
水張りした用紙に描いた作品が完成したら、完全に乾いたのを確認して、カッターナイフで切り取ります。
切り離した作品は、そのまま保存しても問題はありませんが、イラストボードのような厚紙に貼り、紙が曲がらないように保存する人もいます。
また、作品を切り離した後は、パネル側面に用紙の端と水張りテープが残るので、次の水張りに使えるよう、キレイに剥がしておくといいでしょう。
水張りを成功させる4つのポイント
水張りの手順は難しくありませんが、コツが必要な工程もあり、慣れないうちは失敗することもあります。
ここからは、水張りを成功させるポイントを4つほどご紹介していきます。
用紙をたっぷりと濡らす
用紙を濡らす際、つける水の量が少なかったり、端までしっかり濡らしていなかったりすると、水張りが失敗する原因になってしまうことも。
とくに水張りに慣れていない時には、水を使う加減がわからず、少なめに濡らしてしまうことがあります。
紙の表面がボロボロになるまで濡らすのはやりすぎですが、思い切って水をつけるのも大切なポイントです。
綺麗な刷毛・水入れを使う
水張りに使う刷毛や水を入れる容器は、なるべくキレイなものを使いましょう。
着彩やデッサンなどに使っている刷毛や汚れた容器を使うと、絵具や木炭などで用紙が汚れ、せっかくの真っ白な紙が台無しになってしまいます。
水張りに使う刷毛や容器は、念入りに洗うか、水張り専用のものを用意しておくのがいいかもしれませんね。
水張りテープに水をつけすぎない
用紙はたっぷり濡らすべきですが、水張りテープはあまり濡らしすぎないほうがよいでしょう。
必要以上に水をつけると、粘着部分が滑ってしまい、キレイに貼るのが難しくなってしまう場合があります。
刷毛をよくしごいたり、タオルで水を吸ったりして、水の量を調整してくださいね。
経験を積む
水張りは、やり方を頭で把握していても、実践してみるとなかなか難しいもの。
そのため、最初のうちはうまくいかないという人がほとんどかもしれません。
しかし、経験を積むうちに、水の加減や乾かす時間が感覚でわかるようになり、キレイに張れるようになっていくはずです。
水張りしたぶん上達すると思って、諦めずにチャレンジしてみましょう!
まとめ
最近ではデジタルイラストの需要が高まり、ペンタブやパソコンを使って絵を描く人が増えています。
しかし、アナログイラストならではの味のある表現は、パソコンでは表現しきれないもの。
編集者もイラストを描く際は、デジタルで作業する場合がほとんどですが、時には絵具や鉛筆を持ち出して、アナログイラストが描きたくなることもあります。
皆さんも今回ご紹介した水張りの方法を参考に、アナログイラストを描いてみてはいかがでしょうか?