スーパーやコンビニエンスストアに入った時、1番最初に目に入るのが食品や日用品のパッケージです。
パッケージは、良くも悪くも顧客の商品に対する何かしらのイメージを与える力を持っています。
「パケ買い」などという言葉もあるように、パッケージのみで商品を購入する消費者はたくさんいます。この記事を読んでいる方もそういった経験があるのではないでしょうか。
今回の記事では、そんなパッケージデザインの制作を依頼した時にかかる費用について徹底的に解説します。
パッケージデザインの費用相場
パッケージデザインの相場は、5〜30万円程度です。ただし、これはあくまでもデザインにかかる費用で加工費や印刷費は含まれていません。
さらに、これらの相場はあくまでも目安であり高い場合には50万円以上の料金がかかる場合もあります。
JAGDAによるお菓子パッケージ等の料金ガイドライン
ここからはJAGDA(公益社団法人日本グラフィックデザイン協会)が設定している、種類別のパッケージデザイン料金のガイドラインをご紹介します。
ただし、ここでご紹介する料金ガイドラインは1994年に更新されたもので、リニューアル後のサイトには掲載されていない基準です。
現在ではデザインの考え方などが変わり、ガイドラインに当てはまらない部分もありますので、あくまで参考程度にご覧ください。
JAGDAの料金ガイドラインは、以下の通りです。
パッケージの種類 | 推奨価格 |
個装箱 | 137,000円 |
個包装(和菓子等) | 57,000円 |
フィルムバッグ・アルミホイルバッグ | 101,000円 |
缶(ドリンク・食缶) | 117,000円 |
美術缶 | 139,000円 |
ラベル | 90,000円 |
ギフト用パッケージ | 127,000円 |
包装紙 | 65,000円 |
スーパーバッグ | 56,000円 |
中箱(店頭ディスプレイ兼用) | 30,000円 |
ガラス・プラスチック容器 | 78,000円 |
和菓子などお菓子の個包装に使うパッケージデザインは、57,000円とかなりリーズナブルな価格が推奨されています。
一方で、ギフト用パッケージ・美術缶・個装箱などのパッケージは、10万円を超える価格が推奨されています。これは、パッケージそのものに価値があるからといえるでしょう。
パッケージデザインの中で、かなりコスパが良いのがラベルです。ラベルはさまざまな商品や箱に貼ることができるため、多様な使い道があります。そんなラベルは10万円以下での依頼が推奨されているため、コストパフォーマンスに優れています。
パッケージデザインの相場が幅広くなる理由
前述の通り、パッケージデザインの相場は5〜30万円程度ですが、50万円を超える場合もあります。デザイン料金の幅が広くなるのには、以下のような理由があります。
- パッケージは多種多様だから
- 量的要素によって変動するから
- 市場調査やマーケティング費用がかかる場合があるから
- 企画費や人件費が含まれているから
- ラフ案や修正回数によって費用が変動するから
まずパッケージと一口に言っても、さまざまな形・大きさがあります。ラベルのように二次元的なデザインもあれば、箱のように三次元的なデザインが求められる場合もあるでしょう。
さらに、大きさによっても費用が変わります。例えば小さい箱と段ボール箱を比較すると、段ボール箱のデザインは2倍以上になるケースもあります。
量的要素とは、デザインがもたらす付加価値の量のことです。例えば、ラベルを自社商品にのみ利用する場合とテレビCMに利用する場合とでは付加価値の量が異なります。
そういった使用媒体や、デザインを利用する商品の販売量などの量的要素に応じて料金が変動するのが一般的です。
どこまで依頼するのかにもよりますが、デザイン制作に入る前に市場調査などを行う場合、追加で費用がかかります。依頼前にあらかじめ確認しておくべきポイントです。
パッケージデザイン費用の中には、企画費や人件費が含まれています。大手の制作会社に依頼する場合は中小企業と比べて高額となりますが、その理由はこの企画費や人件費が増加するからです。
企画を全て制作会社に丸投げした場合、その分費用が増えることにご注意ください。
ラフ案の数や修正回数によっても費用が変動します。ラフ案とは、大まかな完成イメージのことです。
ラフ案の数や修正回数は、制作会社ごとに限度が定められているケースがあります。定められた限度を超える場合、追加費用がかかります。
パッケージデザイン費用の内訳
パッケージデザイン費用は、主に以下の7種類に分類することができます。
- ディレクション費
- 企画・プランニング費
- デザイン費
- 撮影費
- 試作費
- 修正費
- 印刷費
ここからは、この7種類の費用について詳しく解説します。
なお、ディレクション費がデザイン費に含まれていたり、修正費が3回までなら無料だったりと、これらの内訳は制作会社によって異なることにご注意ください。
ディレクション費
ディレクション費用とは、パッケージデザイン制作プロジェクトの進行・管理にかかる費用のことです。
制作会社によっては「アートディレクション費」「クリエイティブディレクション費」など呼び方が異なる場合があります。
ディレクション費用の相場は、制作費用全体の10〜30%程度です。例えば完成までの料金が30万円だった場合、3〜9万円がディレクション費となります。
ディレクション費は、具体的にいうとディレクターや営業スタッフに対する人件費のことです。ですから、人的コストが上がるパッケージの場合、費用は相場を超えることになるでしょう。
ただ、上記でも説明した通り、ディレクション費は他の内訳に含まれる場合があります。制作会社によって異なる部分なので、あらかじめご確認ください。
企画・プランニング費
企画・プランニング費は、パッケージデザイン制作における最初の工程にかかる費用です。5〜15万円程度が相場です。
具体的なデザインのイメージなどが決まっていない場合、デザイナーを交えてヒアリングを行いデザインの方向性を決める必要があります。
商品の詳細な情報・商品のコンセプト・魅力・他社の商品と比較した際の強み・商品のターゲットなどをもとに、「どんなデザインにするか」を決める工程です。
この工程でどんなデザインになるかが決まってしまうため、パッケージデザイン制作の中で最も重要な工程といえるでしょう。
企画・プランニングの工程を飛ばしていきなりデザインに着手すると、依頼側がイメージしたものとは異なるデザインになってしまうかもしれません。そうなると何度も修正を重ねることになったり、1からデザインを作ったりと、さらに費用がかかってしまいます。
依頼側と制作側で相違が生まれないようにするために、必要な工程・費用です。
デザイン費
デザイン費とは、文字通りデザイナーがパッケージデザインを制作する費用です。相場は3〜20万円となります。今回ご紹介する内訳の中で、最も費用に差が出る部分です。
デザイン制作では、まずラフ案が作られます。ラフ案に対して依頼側からの了承が得られてから、実際のパッケージデザイン制作に進むという流れです。
デザイン費の相場が幅広くなる理由は、以下の項目によって変動するためです。
- パッケージの種類
- サイズ
- デザインの品質
- デザイナーのスキル・知名度
パッケージの種類やサイズに関しては費用が変動しにくいのですが、デザインの品質やデザイナーのスキルに対する費用は判断が難しいポイントです。
依頼先によっても大きく異なる部分なので、前述したJAGDAによるガイドラインを参考にするとよいでしょう。
広告代理店などを通して著名なデザイナーにデザインを依頼する場合、これらの相場を大きく上回る可能性があることにご注意ください。
撮影費
パッケージデザインには、デザイナーが描くイラストが使われる場合もあれば、写真素材が使われる場合もあります。
写真素材を制作会社に用意してもらう場合、撮影費用がかかります。撮影費の相場は3〜8万円程度です。
撮影費はプロのカメラマンの人件費がほとんどを占めているため、撮影時間が長ければ長いほど費用は高くなります。
試作費
撮影も終わり、デザインも完成したら、次は試作品を制作する工程に進みます。この試作品はダミーと呼ばれることもあります。
試作品を作る理由は、パッケージはチラシやポスターと違って立体的なものも多く、実際に印刷して目で見て確認する必要があるからです。
ですから試作品という形で実物と同じものを1度制作し、見え方やデザインのゆがみが無いかなどを確認していきます。
この試作品制作にかかる費用は、デザイン費に含まれるケースもあります。仮に含まれていなかったとしても、高額になることはありません。
修正費
パッケージデザイン制作では、試作品の確認とデザインの修正を何度か繰り返して、完成させる流れが一般的です。
最初の試作品ができた段階でデザインが完成するケースは、それほど多くありません。
デザインの修正にかかる費用の相場は、全体の10〜20%です。しかし、制作会社によっては3回まで修正が無料だったり、修正費用がデザイン費に含まれていたり、修正するたびに追加費用がかかったりと、ケースバイケースです。
具体的なイメージが固まっていない場合は修正回数も増えるため、見積もりを出してもらう段階で修正費用については確認しておくことをおすすめします。
印刷費
印刷費は、印刷会社・印刷方法・素材・数量・カラーなど、変動する要素が多い費用です。
さらに印刷そのものの費用だけではなく、素材に対してつや加工などの加工を施す場合は追加費用がかかります。
印刷費用の相場は、紙の場合1枚あたり90〜130円程度です。缶や箱に直接印刷する場合は、さらに費用がかかります。
印刷会社に頼まずにネット印刷を選ぶ方が費用を抑えることができますが、イメージ通りでない場合があるためご注意ください。仮にネット印刷を利用する場合、まずは小ロットで依頼して実物を確認するようにしましょう。
色や質感に特別なこだわりがある場合は、ネット印刷ではなく印刷会社を選ぶのがおすすめです。
パッケージデザインの主な依頼先
パッケージデザイン制作を外注する場合、依頼先によっても費用は異なります。パッケージデザインの依頼先は、主に以下の3つです。
- デザイン会社
- 広告代理店
- フリーランス
ここからは、これら3つの依頼先別の費用と特徴について解説します。
デザイン会社
デザイン会社に依頼した場合の費用は、相場を大きく下回ることもなければ大きく上回ることもありません。会社の規模が小さいデザインスタジオであれば、相場よりも安価で依頼することができるでしょう。
会社によっては格安プランを用意していたり、テンプレートを用意していたりと、より安価で依頼できる場合もあります。
ですから、予算に限りがあっても諦めずに相談してみましょう。
デザイン会社はその名の通りデザインに特化していて、デザイナー・イラストレーター・ディレクターなど複数のスタッフがプロジェクトに関わるため、かなりクオリティの高いパッケージを期待することができます。
会社によって得意なデザインが異なるため、過去の制作実績などを見てイメージと近いか確認しておくのがおすすめです。
デザイン会社の中には、パッケージデザインを専門にしている会社もあります。
パッケージデザイン専門会社の場合、企画から印刷まで全ての工程において専門家がいて、効率よく作業を進めることが可能です。
スムーズに作業が進むということは、つまりその分人件費が抑えられるということです。ですから、一般的なデザイン会社と比較すると費用は抑えることができるでしょう。
さらに、過去にさまざまなパッケージデザインを制作してきた実績があるため、さまざまな商品・サイズ・形状に対応できるのが特徴です。
ただしパッケージデザイン専門会社は数が少なく、複数社に見積もり依頼を出す場合探すのが面倒というデメリットもあります。
比較的安く依頼することができ、クオリティも期待できるのがデザイン会社です。
広告代理店
パッケージデザイン制作を広告代理店に依頼するという選択肢もあります。
広告代理店に依頼する場合はデザイン会社への依頼と異なり、商品のマーケティング・プロモーションまで依頼可能です。
テレビや雑誌などのマスメディアに対するプロモーションまで視野にある場合は、広告代理店への依頼をおすすめします。
デザイン会社はデザインのクオリティは高いのですが、マーケティングやプロモーションを得意としている会社は少ないからです。
一方で、制作にかかる費用はデザイン会社と比較するとかなり高額になります。なぜなら、広告代理店は会社の規模が大きいケースがほとんどだからです。
会社の規模が大きくなるとその分多くのスタッフが関わることになり、人件費も増加します。さらに、広告代理店には自社にデザイン部署がある会社と無い会社があります。
自社にデザイン部署がない場合は外部のデザイン会社に委託することとなり、仲介料という形で費用が増えてしまうのです。
しかし、過去の経験から商品に適したデザイン会社を紹介してくれたり、知名度の高いデザイナーを紹介してくれたりする場合もあります。
競合他社と比べてよりハイクオリティなデザインにしたい場合や、メディアへの露出を意識している場合は広告代理店への依頼がおすすめです。
フリーランス
パッケージデザイン制作をフリーランスに依頼するメリットは、なんと言っても価格の安さにあります。
フリーランスに依頼する場合の相場は、5〜10万円です。ただし、知名度の高いフリーランスデザイナーに依頼する場合は、デザイン会社と同程度の費用がかかる場合もあるのでご注意ください。
複数のスタッフが関わるデザイン会社や広告代理店への依頼と異なり、フリーランスはデザインの完成まで全て1人でこなすため費用を抑えることができます。
しかし、全て1人でこなす分、依頼する方のデザインスキルが非常に重要なポイントとなります。
フリーランスに依頼する場合、クラウドソーシングサイトやSNSを経由して探すことになりますが、高度なスキルを持ったフリーランスを探すのは非常に難易度が高いです。
クラウドソーシングサイトやSNSには、デザイン会社から独立したデザイナーもいれば、デザイン制作を始めたばかりの方もいます。
その中で実力のあるフリーランスを見つけるのは、簡単なことではありません。
仮にフリーランスに依頼する場合は、過去の制作実績などをもとにデザインスキルを判断する必要があります。
できるだけ費用を抑える5つのポイント
最後に、パッケージデザインの制作費用を抑えるポイントを5つご紹介します。
何を訴求したいのかを明確にする
顧客や見込み客に対して、訴求したいポイントを明確にするだけでも費用を抑えることができます。
上記でも解説した通り、パッケージデザイン費用の中には「企画・プランニング費」があるからです。
商品のコンセプト・魅力・特に伝えたいポイント・ターゲットなどを明確にしておくことで、依頼先の工数を減らすことができます。
もし伝えたいポイントを明確にできない場合、反対に伝えたくないポイントをまとめておいてもよいでしょう。
他社の商品と比較した時の弱みをヒアリングまでにまとめておくだけでも、工数を減らすことができます。
レイアウト案を作成する
レイアウトとは、写真やテキストなどさまざまなパーツの配置のことです。
パワーポイントやPhotoshopなどを使ってデザインのレイアウト案を作成することで、デザイン費を抑えることができます。
さらに「洋風っぽいフォント」や「赤系の色」など、大まかなデザイン案を用意しておくこともデザイン費の削減に繋がります。
あらかじめ素材を用意する
パッケージに利用したい商品の写真やイラストを自社で用意できれば、費用の削減に繋がります。
特に写真素材は、自社でも用意できる可能性が高いです。仮に写真素材の準備も依頼した場合、プロのカメラマンを雇うこととなり前述した通り3〜8万円の費用がかかります。
自社で素材を用意できれば、単純にこの撮影費が削減可能です。
チラシやポスターなど別のデザインで使用した素材がある場合、その素材をパッケージデザインに再利用することもできるでしょう。
ここまでご紹介した「何を訴求したいのかを明確にする」「レイアウト案を作成する」「あらかじめ素材を用意する」の3つは、簡単にいうと依頼先に丸投げしないことで費用を抑える方法です。
これらの他にも、自社でディレクション費を行ったり、印刷会社への発注を行ったりすることで費用を抑えることができます。
もちろんそれぞれ経験やスキルが必要となりますが、より費用を抑えたい場合、できるだけ自社で行う工程を増やしましょう。
複数の制作会社に見積もり依頼を出す
パッケージデザインに限った話ではありませんが、デザイン系の制作依頼で費用を抑えるためには複数の会社に見積もりを出すのが基本です。
なぜなら、デザイン費用はデザイナーや制作会社によって大きく異なりピンキリだからです。プロジェクトに関わる人数や修正回数、デザインの技術料など費用の内訳は多岐にわたります。
ですから費用面だけで見ると、複数の会社から見積もりをもらい最も安い会社に依頼することになるでしょう。
しかし、費用の安さだけで依頼先を決めるのはおすすめできません。
イメージしているデザインに近いものを提供できるスキルがあるのか、マーケティングやプロモーションの面における経験があるのか、多数の制作実績があるのかなど、費用だけではなKUさまざまな面から依頼先を選びましょう。
なお、訴求したいポイントや使いたい素材は、見積もりを出す前に用意することをおすすめします。あらかじめ用意しておくことで、より詳細な見積もりを出してもらい、比較することができるからです。
知人の会社に依頼する場合や依頼先にこだわりがあるケースを除き、複数社に見積もり依頼を出すようにしましょう。
チラシやパンフレットと同時に依頼する
デザイン会社の多くは、パッケージデザインだけではなくチラシ・ポスター・パンフレットなどさまざまなデザイン制作に対応することができます。このように、さまざまなデザイン制作を行うことをトータルデザインと呼ぶこともあります。
そんなトータルデザインに対応できる会社へ依頼すると、プランによってはパッケージデザインと同時にチラシやパンフレットのデザイン制作をまとめて依頼することで割引が可能です。
具体的にいうと、制作会社によっては全体費用の2割以上を値下げしてくれる所もあります。
依頼側からしても全体の費用を抑えることができ、受注側からしても1度に大量の注文を受けることができるためwin-winの関係を築くことができます。
パッケージデザイン以外のデザイン制作を考えている場合、デザイン会社へ同時に注文してみるとよいかもしれません。
まとめ
これまでご紹介してきたように、パッケージデザインの相場は5〜30万円程度です。
しかし、この費用はあくまで目安であり、パッケージの種類・量的要素・依頼先などによって大きく変動します。
制作にかかる費用をできるだけ抑えるポイントは、以下の通りです。
- 何を訴求したいのかを明確にする
- レイアウト案を作成する
- あらかじめ素材を用意する
- 複数の制作会社に見積もり依頼を出す
- チラシやパンフレットと同時に依頼する
依頼先に全てを丸投げするのではなく、自社で用意できるものを用意し、依頼先が用意しているプランなどを賢く利用して制作を依頼しましょう。