動画作成、イラストレーター、デザイナーなど業種を問わず、クライアントとの契約の中でよく出てくる「業務委託」という言葉。実際に説明してみてと言われてしっかり説明できる人は少ないのではないでしょうか?
フリーランスで仕事をしていくなら、業務委託契約について知っておくことはとても重要です。
この記事では、主に以下の4つについて紹介・解説しています。
・「業務委託」と「フリーランス」の意味
・フリーランスにとっての「業務委託契約」
・業務委託契約の種類や注意点とトラブル例
・フリーランスが結ぶ業務委託契約の重要性
これから独立して仕事をしたいと考えている人必見の情報をまとめているので、ぜひ最後まで読んでいってくださいね。
業務委託とフリーランスの意味とは?
今回のテーマとなる「業務委託」と「フリーランス」という言葉は、特にクリエイター業ではよく聞く単語。
フリーランスデザイナー、フリーランスのイラストレーター、フリーの動画編集者など、SNSのプロフィールなどで見たことがあるのではないでしょうか?
業務委託契約については単語だけ聞いたことがある、フリーランスの人がたまに使っている言葉と、その程度の認識の人も多いでしょう。
フリーランスと業務委託という単語を混合してしまっている人も多いですが、実はこの2つは全く別の意味を持つ言葉なのです。
まずは業務委託とフリーランスという言葉についてそれぞれ解説します。ここできちんと覚えてしまいましょう。
言葉の意味から違いを知ろう
「業務委託」と「フリーランス」は、それぞれ全く別の意味を持つ単語です。
同じようなものと考えてしまっている人もいますが「業務委託」は契約方法、「フリーランス」は働き方であるという大きな違いがあります。
「業務委託」とは
業務委託とは、会社業務の一部を外部の企業や個人事業主に任せることを指します。業務委託をする際に結ばれる契約を業務委託契約と言い、委託者と受託者の関係が対等である点が大きな特徴。
一般的な会社勤めなどで結ばれる雇用契約では、会社と個人において主従関係がありますが、業務委託契約では上下関係や主従関係はありません。
「フリーランス」とは
フリーランスとは、会社や団体などに所属せず、仕事に応じて自由に契約する人や働き方のこと。
主にライター、デザイナー、イラストレーター、編集者、SEなど個人で動ける技術者に多く、居住エリアや時間を問わず仕事ができるメリットがあります。
フリーランスの場合、労働基準法が適用されないことが大きな特徴です。最低賃金、労働時間、休日、保証などがないため、安定感や安心感はあまりありません。
ちなみに、似た単語として挙げられる「個人事業主」は、「事業を法人ではなく個人でおこなう者として、税務署に開業届を提出している人」を指す言葉です。税法上はフリーランスも個人事業主に含まれるため、似たようなものとして認識していても問題はないでしょう。
仕事におけるフリーランスと業務委託
フリーランスは個人で動く技術者などであり、基本的に依頼を受けて作業をし、対価として報酬をもらうことで生計を立てています。
個人間での依頼から企業対個人などまで様々なパターンの仕事がありますが、会社内の業務を一部委託される際に結ぶ契約が「業務委託契約」です。
直接契約では書面上で契約内容を確認し、双方が納得した上で契約を取り交わすことになります。最近では電子契約も多いため、面談から契約までオンラインで完結することも増えました。
業務委託契約は会社対個人の図にはなるものの、対等な関係であるため細かな交渉や相談が可能です。お互いに不利や不満がないよう調整した上で契約できるので、急な業務増加や理不尽な要求を受けることがありません。
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フリーランスが業務委託で働く基本とあるある
次に、フリーランスとして働く人にとっての業務委託について、以下の3点を解説します。
・業務委託契約の基本|種類・流れ・注意点
・業務委託契約のメリットとデメリット
・業務委託契約でよくあるトラブル例
フリーランスが結ぶ業務委託契約の種類・流れ・注意点
業務委託で仕事を取る前に、契約の種類、流れ、注意点をそれぞれきちんと知っておきましょう。よくわからないまま契約してしまうと、後々になって困りごとが出てきてしまうこともあります。
事前に知識を蓄えておき、正しく業務委託契約を結べるようになりましょう。
業務委託契約の種類
業務委託について、「準委任契約」と「請負契約」と「秘密保持契約」の3つを知っておく必要があります。
それぞれの特徴を確認していきましょう。
準委任契約
準委任契約は、「業務遂行を目的とする」契約。成果物の有無は問わず、作業に対して報酬が発生します。
例えば、契約期間内に完成に至らなかったとしても、それまでの作業について報酬が支払われるためやり損になることがありません。
ただし、動画作成やイラスト作成などは基本的に作品を求められる仕事なので、準委任契約となるパターンは少ないでしょう。
ちなみに、弁護士など法律行為を委任する場合は「委任契約」、それ以外の業務が「準委任契約」に分類されるので、クリエイター業は「準委任契約」となります。
請負契約
請負契約は、完成を目的とする契約です。過程は問わず、成果物・納品物に対して報酬が発生します。
完成品をクライアントに届けるまでが仕事なので、品質が足りていない、欠陥や不備があるなどの場合には報酬が支払われないこともあります。
とは言え、大抵の場合修正まで含めて業務を委託されるので、きちんと対応すれば問題ありません。
クリエイター業では納品までおこなうのが基本であるため、主に請負契約を結ぶことが多いでしょう。
秘密保持契約(NDA)
業務委託契約とは別にセットで結ばれることが多いのが秘密保持契約(NDA)です。
秘密保持契約は、業務上知ることになるクライアントの内部情報を外部へ漏らさないことを約束するもの。
NDAと表記されることもあるので、クラウドソーシングサイトのプロフィールなどで「NDA締結済み」などと書いてあるのを見たことがある人もいるのではないでしょうか?
準委任契約または請負契約と一緒に交わされる契約なので、必要に応じてまとめて契約書を渡されます。
クラウドソーシングサイト経由の場合、サイトを利用する際にサイト対ユーザー間でNDAを交わす場合も多く、逐一クライアントとのやりとりではNDAの話題が出ないこともあります。
いずれにせよ、クライアントの情報は外部に漏らさないということを常に心掛けておけばトラブルになることはありません。
業務委託契約の流れ
業務委託契約は大きく分けて4つの段階を踏んで結ばれます。
内容の取り決め、書面の作成、内容の調整、契約締結という流れが一般的。何度か仕事をしている相手であれば細かくチェックすることも少なくなっていくかもしれませんが、慣れないうちは丁寧に各段階を踏んでいきましょう。
契約内容を決める
まずは打ち合わせや提案を踏まえて契約内容を決めていきます。
業務内容、金額、期間などの項目に加え、修正や増額、減額の条件、契約解消についてなどもなるべく細かく確認していきましょう。
片方に不利や不満が出ないようにこの段階でしっかり話を詰めておきます。
契約書の作成
フリーランスと企業が業務委託契約を結ぶ場合、大抵はクライアント側が契約書を作成し、共有されます。最近では電子契約の場合も多く、仕事用のEメールアドレスや、電子契約専用サイトへの登録が必要になることもあります。
フリーランス側が契約書を作成する場合は、インターネットなどで配布されているテンプレートを流用するのもOK。契約内容をきちんと確認しつつ作成していきます。
契約書の調整
一度作成した契約書に目を通し、内容に不備や疑問点がある場合は都度調整を加えます。
特に報酬に関わる部分はしっかり見ておきましょう。
双方が納得できる内容を記載し、もし契約書にないトラブルが起きてしまった場合の対処についても書いておくのが無難です。
契約の締結
内容を確認したら、改めて正式に契約書を受け取り、または発行します。
書面にて契約を締結し、業務を開始しましょう。
クラウドソーシングサイトでの契約
クラウドソーシングサイトを利用する場合も契約の流れはほとんど同じです。
ただし、各サイトで進め方が微妙に異なる場合もあるため、その都度確認しましょう。
提案や仮払いなどをサービス上でおこなうので、業務委託契約について不安がある人は活用するのもおすすめです。
フリーランスが案件を取る方法についてはこちら!
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業務委託契約の注意点
業務委託契約を結ぶ際、内容をきちんと把握して準委任契約なのか請負契約なのかを確認しておきましょう。
特に難易度の高い業務については、納品後に報酬が支払われないなどのトラブルを避けるためにも作業そのものに報酬が発生する準委任契約になっているほうが安心です。
また、業務内容や報酬はもちろん、仕事の期間や進捗報告についても事前に話し合っておくと双方の業務がスムーズになります。どの段階で、またはどの程度の頻度で進捗連絡をおこなうのかを事前に決めておきましょう。
念のため、損害賠償や障害金の支払い義務など、万が一のトラブルで話の軸となる内容についてもきちんと確認しておけば安心して業務に当たれますよ。
フリーランスにとって業務委託契約書は重要!
フリーランスとして働く人は、自分で自分を守らなければなりません。トラブル回避や仕事管理のためにも、明確な書面を残すことは大切です。
業務と報酬をチェックしてトラブルを回避する
業務委託契約を結ぶ際、まずは業務内容、納期、報酬、支払方法、支払時期などの内容を確認します。
そもそも技術者側がどこからどこまでの作業を請け負うのか、いつまでに完了させるのかを明確化しなければ、仕事のスケジュールを立てられません。
クライアントから何を求められていて何をすれば良いのか、あるいは何をしなくて良いのかを明確化しましょう。
契約外の仕事についてはサービスではなく、別途報酬が発生しますよ、と示すことにもなるため重要です。
業務内容に対していくらの報酬が発生するのか、いつまでにどの方法で支払われるのかもチェックしてください。後で減額されたり、支払いが滞ったりするトラブルを回避するためにも大切な項目です。
知的財産の帰属や利用形態について認識を共有する
知的財産の帰属、利用形態についての認識は業務やクライアントによって異なります。案件ごとに確認しておきましょう。
業務内で作成したものを流用しないよう、成果物の知的財産をクライアントへ譲渡するという内容の取り決めはよくあるもの。著作権譲渡など、制作物についての権利については事前に確認しておくべきです。
また、成果物を当初の目的以外で利用される場合についてもルールを決めておきましょう。
例えば、動画投稿サイト用に作成した動画を、無断でSNSでの広告宣伝に流用されたために使用料についてトラブルになるなどのパターンがあります。
業務委託契約における制作物の用途と、それ以外のシーンへ流用したい場合の追加料金などを予め定めておけば、余計なトラブルを避けられます。
フリーランスの業務委託契約でよくあるトラブル
次に、フリーランスの業務委託でよくあるトラブルについて例を交えつつ紹介します。
多くのトラブルは、契約書の取り交わしや契約内容に気を付ければ解決、回避できることです。
また、即座に解決できなくても契約書に沿って双方が納得できる方向で事態を収められることもあります。
ケーススタディとして解決方法の例も紹介するので、参考にしてください。
ケース1|偽装請負だった
“請負契約を結んだ案件で、やたらとクライアントから進捗内容や時間管理をされる。他の案件もあるので並行してスケジューリングしているのだが、指示が細かく対応が面倒に感じる。”
請負契約の場合、成果物に対して報酬が発生するため、作業過程について指示を受ける必要はありません。
クライアントがフリーランスに対して細かい指示を出す、管理をおこなう、評価をする、行動につきクライアントの承認が必要であるといった場面が見られる場合は偽装請負である可能性が高いです。
上に挙げたような管理行為は、雇用契約でのみ許されるもの。立場が対等である業務委託契約では許されていません。
偽装請負には、企業側に社会保険料の負担がないため金銭面の負担を軽くできるというメリットや、解雇規定がないため人員調整がしやすいという特徴があります。
労働基準法違反であることを示し、契約書を元にきちんと対応しましょう。
個人で対応しきれないと判断した場合は、弁護士や労働基準監督署への相談もできますよ。
ケース2|フリーランスに不利な契約にされた
“明らかにフリーランス側に不利な内容の契約であったが、せっかくの仕事だから白紙に戻されたくないと思い契約してしまった。成果物の修正作業を無償で何度でも対応するという内容で、結局契約期間後もお金にならない修正作業に追われてしまった。”
フリーランスと企業が業務委託契約を結ぶ際、企業側から発行された契約書にフリーランスに不利な条件が記載されている場合があります。
何度も言いますが、業務委託契約は対等な立場で交わす契約です。締結する前に、明らかに不利な条件がないかチェックし、もし気になる点があればきちんと話をするようにしてください。
例のようなケースでは、契約内容に同意してしまっているため該当業務の修正作業には何度でも無償で対応しなければなりません。
修正の回数や期間について事前に話を詰めておけば、それ以上の作業については別途報酬が発生することを明示できます。
修正回数や無償で対応する期間、または修正に対する対価を契約書にはっきり記しておきましょう。
ケース3|責任の所在が不明瞭で言い合いに
“クライアント側に送ったファイルが開けないと怒られてしまった。こちらではファイルを開けるので、どの段階で問題が起きているのか探ろうとしたが応じてもらえなかった。曖昧なままファイルは無事届けられたが、トラブルについて言及され報酬の減額交渉までされてしまった。強く言い返すことができず、減額に応じた。”
業務中にトラブルが起きた際、責任の所在が明らかでない場合問題が大きくなってしまうことがあります。報酬の減額という形で責任を取らされるということもあり得るため、責任問題についても事前の話合いが必要です。
例えば、例のケースでは提出前の保存方法などに問題があればフリーランス側、提出後のダウンロードで問題が発生したならクライアント側に責任がありますよね。トラブルの元を明確化し、それがどちらの責任なのかをきちんと話し合いましょう。
また、紛失などの大きなトラブルについては特に責任の所在や対応の仕方を契約前に確認しておくのがおすすめ。誰がどのように対処し、罰則を受けるのかも決めておいた方が良い場合もあります。
ケース4|報酬が未払いのまま数か月経ってしまった
“報酬の支払い方法と時期を明確にしていたにもかかわらず、クライアントからの支払いがない。催促して良いものかわからず、数か月が経過してしまった。”
業務委託契約を結ぶ際、報酬の金額、支払方法、支払時期などは必ず書面で残しておきましょう。
例のようなケースでも、契約書を元にきちんとした話ができるようになります。
まずは自分で相手に話を持ち掛けますが、それでも応じない、逃げられてしまうなどの場合は弁護士へ相談したり裁判所を介した法的な手段をとることもできます。
まとめ
「業務委託」と「フリーランス」は全く違う意味を持つ言葉です。
業務委託は契約方法を指し、フリーランスは働き方を指します。
業務委託契約とは、雇用契約と違いクライアントと技術者が対等であるという特徴を持つ契約方法です。業務委託契約では時間や最低賃金などを含む労働基準法が適用されません。
フリーランスとは、会社や団体に所属せず働く個人、またはその働き方です。事業を個人でおこなう「個人事業主」に含まれる働き方であり、労働時間や場所に縛られないという特徴があります。
業務委託契約には2種類あり、1つは業務遂行を目的とする準委任契約、もう1つは完成品を目的とする請負契約です。加えて、業務委託契約と同時に内部情報を外部に漏らさないことを約束する秘密保持契約(NDA)を結ぶこともあります。
業務委託契約は、お互いが対等に話し合いをし、内容確認とすり合わせをした上で発行・締結しましょう。自分に不利な条件は、決してそのままにしてはいけません。
業務に関するトラブルを避けたり、成果物の権利や用途について明確にしたりする意味でも契約書は重要な役割を担っています。
偽装請負、不利な契約、責任の押し付け合い、報酬の未払いなどフリーランスは自分で対応しなければなりません。
自分の身を守るためにも、極力書面を残すようにしてくださいね。