イラストを完成させるまでには、ラフや下書き、線画、着色など、いくつかの手順があります。
普段絵を描いている人なら、経験を積むうちに、なんとなく手順を理解しているかもしれませんね。
しかし、厳密に「ラフ画」や「下書き」などの工程が、どの程度手を加えた状態を指すかと聞かれると、すぐには答えられない人も多いのではないでしょうか。
今回の記事では、「ラフ画」の基準や、絵を描く上での重要性についてご紹介していきます。
ラフ画とは?
ラフ画とは、イラストの大まかなイメージを、時間をかけず簡単に描いたもののこと。
言葉の通り“ラフ”な絵なので、細部の描写や線の綺麗さは問われず、鉛筆などでざっくりと描かれる場合が多くなっています。
また、絵の依頼を受けた際には、クライアントの要望を聞いて何パターンかのラフを作成し、最も相手の意図に合ったラフからイラストを作成することもあります。
「ラフ画」の範囲はどこまで?
ここからは、ラフ画とはどの程度描き込むものなのか、ご紹介していきます。
ラフの定義とは?
“線画や着彩作業に入る前に描くもの”ということで、「ラフ」と「下書き」を同じものだと考えている人もいるかもしれません。
しかし実際には、ラフ画からさらに細かく、明確に描きこんだものを「下書き」ということが多くなっています。
ラフ画は、「これから描くイラストの方向性を固めるための、ざっくりとしたイメージ画」、
下書きは、「線画を描く時に参考にする、ある程度整えて描いた絵」、と考えるといいかもしれませんね。
ラフの範囲は人それぞれ
ラフの定義はご紹介した通りですが、実際のところ、どこからどこまで描き進めたものを「ラフ画」というかは、絵師によってさまざま。
細かい書き込みや着彩まで仕上げたものを「ラフ」という人もいれば、ラフと下書きを同時に済ませてしまうという人もいます。
さらに、イラスト制作の経験が豊富なプロの中には、ラフも下書きも描かず、いきなり清書から始める人も……。
ラフに「どこまで描き込むか」という決まりはなく、イラストに絶対必須!というわけでもありません。
しかし、プロがラフ無しでイラストを描けるのは、過去にたくさんのイラストを描いた経験があるからです。ラフ無しで絵を描く技術は、簡単に身につくものではないでしょう。
とくにイラスト初心者のうちは、どんな形でも、自分なりに毎回ラフを描いてみることをオススメします。
用途によって変わる?
ラフ画をどこまで描き込むかは、ラフの用途によっても変わります。
自分しかラフを見ない場合
ラフ画を誰にも公開しない場合、ラフ画はいわば、個人用のメモのようなもの。
自分でラフを見返した時に意味が分かればいいので、どんなに描き込みが少なくても、わかりづらくても問題ありません。自分にとっていちばん見やすい・使いやすいラフを描きましょう。
他者にラフを公開する場合
自分以外の誰かに絵のイメージを共有する場合は、相手にイメージが伝わる程度に描き込まれた、または分かりやすく整理されたラフが必要になります。
とくにイラストの依頼を受けた場合、クライアントにラフを見せる機会が多くなるので、ある程度は描き込んでおいたほうがいいでしょう。
ラフの段階で、絵のイメージを明確に伝えることで、後で無茶な注文を付け足されたり、一から作り直しになるような大きな修正指示を出されたりといった問題を減らすことができます。
ラフ画の重要性
ここからは、ラフを描く大切さについて、いくつかご紹介していきます。
絵のバランスが崩れにくい
絵の細部を描き込み始めると、全体のバランスがおろそかになりやすいもの。
イラストを仕上げた後になって、絵全体の要素が右に寄りすぎている、キャラクターのポーズがおかしいなど、大きな問題が発生した場合、修正がかなり大変になります。
ラフの時点で大まかにでもバランスを確認しておけば、致命的な失敗は抑えやすくなるでしょう。
行き詰まった時のヒントになる
何度も重ねて絵の修正を繰り返すと、制作当初のイラストのイメージが分からなくなったり、元のイメージからズレた作品が完成してしまったりすることも多いかもしれません。
絵の元々のイメージを忘れてしまった時は、一度ラフ画を見返すと、初めのイメージを思い出して、迷わずに仕上げられる場合があります。
構図を考える練習になる
イラストのクオリティを上げるために必要なのは、画力だけではありません。絵の構図や全体のバランスなどもまた、イラストを魅力的に見せる大切なポイントです。
ラフ画の制作は、絵の構図をじっくり考えたり、全体のバランスを確認したりするいい練習になるので、面倒でも、なるべくラフを考える習慣をつけるといいでしょう。
ラフ画制作時のポイント
ここからは、ラフ画を描く時のポイントについて、いくつかご紹介していきます。
あまり丁寧に描き込みすぎない
ラフは絵全体のバランスや、大まかなイメージを掴むために描くもの。
線画のように線を整えて描いたり、細かい装飾を描きこんだりする必要はありません。
丁寧に描いても完成時には消してしまうので、下書きをしない場合や、クライアントから「なるべく描きこんだ状態でラフを提出してほしい」と指示された場合でなければ、細部まで丁寧に描き込むメリットはないといえるでしょう。
後で役立つようにラフを描く
ラフを描いた後には、下書きや線画など、さまざまな作業を進めていくことになります。
ラフ画の時点でイメージが明確に決められていれば、下書きや仕上げもスムーズに進みやすく、絵の印象もブレにくくなるもの。
ラフにデザインのメモを描きこんでおく、ざっくりと配色を決め、軽く色を塗っておくなど、後々の工程で役立つようなラフを描いていきましょう。
まとめ
ラフはイラストの完成度を左右する、重要なポイント。
ラフをよく考えながら作り、構図やバランスを整えると、後の下書きや修正がかなり楽になるでしょう。
イラストの仕事をしている方や、今後イラストレーターとして働きたいと考えている方は、この機会にラフの大切さを再確認してみてくださいね。